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小中高で必修化!プログラミング教育の内容や問題点について
小中高で必修化!プログラミング教育の内容や問題点について
公開日:2022/09/10
更新日:2022/09/10
学習指導要領の改訂に伴い、2020年より小学校でプログラミング教育が必修化、2021年より中学校で技術家庭でのプログラミングの内容が拡充、2022年より高校で情報Ⅰが新設・必修化されました。IT化が進む社会の変化にあわせた自然な流れではあるものの、「何を学んでいるのか」「まだ早いのでは」などの不安を感じる保護者も多いのではないでしょうか。そこで、本記事ではプログラミング教育の目的や内容を中心に、問題点も含めて詳しく解説します。
1.コンピューターの言葉を学ぶ?プログラミング教育とは何か
そもそも、プログラミングとは何でしょうか。これを一言で説明すると、「コンピューターに命令すること」です。コンピューターは、こちらから命令しなければ動きません。そこで、コンピューターに意図した動作をさせるために、指示を順番に書き込んだ「プログラム」を作成します。これがプログラミングです。命令するときは、コンピューターが理解できる言葉である「プログラミング言語」を使用します。プログラミング言語を使ってコードを記述していくことを「コーディング」と言います。
ただし、プログラミング教育でいきなりプログラミング言語やコーディングを学ぶわけではありません。学校教育の場で行われるプログラミング教育の目的は、コンピューターの仕組みを正しく理解して活用する方法を習得することです。習得の過程を通し、物事を論理的に考える力である「プログラミング的思考」を育みます。インターネットやAIはすでに一般化し、生活のあらゆる分野で欠かせない存在です。将来を見据え、児童や生徒に対しプログラミング教育を実施する重要性は、急激に高まっていると言えるでしょう。
2.論理的思考を伸ばす!プログラミング教育の目的
プログラミング教育の目的は多岐にわたります。主な目的としては「プログラミング的思考の育成」や「ITスキルの基礎知識習得」などが挙げられるでしょう。ここでは、プログラミング教育を実施する目的について掘り下げて解説します。
2-1.プログラミング的思考の育成
プログラミング教育を実施するもっとも大きな目的はプログラミング的思考の育成であるといっても、過言ではありません。プログラミング的思考の育成が重視されるのは、子どもたちが将来どのような仕事に就くとしても普遍的に求められる力だからです。プログラミング的思考とは、「目的を達成するためにすべき事柄や必要な物事を順序立てて論理的に考え、計画的に実行する能力」を指します。コンピューターに意図した動作をさせるためには、順序立てて命令することが不可欠です。指示が体系化されず因果関係がばらばらのプログラミングをいくら示しても、コンピューターは理解できません。意図した動作をさせるためにはどのようにプログラミングすべきか、どこを改善させるべきかを考えることで、プログラミング的思考が自然と養われます。
プログラミング的思考を実現するためには、論理的に思考するだけでなく、実行する力も必要です。そのため、プログラミング教育は、論理的思考力のほかに創造性や問題解決能力、行動力の育成にもつながります。
2-2.ITの基礎知識の習得
プログラミング教育を実施するもう1つの主な目的は、IT基礎知識の習得です。先にも述べたように、小学校ではプログラミング的思考の育成をメインの目的としてプログラミング教育が実施されます。中学校からはITの基礎知識の習得も重視されるようになり、高校では独立した科目としてより高度な内容を学ぶようになります。IT知識の習得を目的とした学習では、まずはタイピングなどの基本的な操作からスタートし、プログラムやネットワークを活用して問題解決を図るなど、情報活用能力の習得も目指します。
2-3.IT社会に順応するための準備
プログラミング教育は、将来を担う子どもたちがIT社会に順応するための準備も兼ねています。社会のIT化が進み、今後もますます進化を続けていくことは想像に難くありません。社会の進化に対応するためには、ITの根本的な仕組みであるプログラミングについて知ることが大切です。そこで、プログラミング教育では、早い時期からプログラムが日常生活においてどのように活用されているかを知ることに重点を置いています。
大人になってからプログラミングに取り組もうとしても、新しい技術やスキルを習得することは容易でなく、苦手意識を持ってしまうことも少なくありません。そこで、発想が柔軟で吸収力の高い子どものうちにできるだけプログラミングに親しみ楽しむ機会を与えることで、苦手意識を持たずに成長することを目指します。また、IT業界は慢性的に人材不足に悩んでいます。子どものころからプログラミング教育を実施することで、ITに興味を持つ人材の増加も見込んでいます。
3.ITに詳しくなるだけではない!プログラミング教育のメリット
プログラミング教育を実施するメリットは、ITスキルの向上だけではありません。ここでは、プログラミング教育のさまざまなメリットについて解説します。
3-1.他の教科が理解しやすくなる
小学校で行われるプログラミング教育は、プログラミングそのものを集中して学ぶスタイルではありません。国語や算数など既存の教科に取り入れて実施され、その教科に対する理解を深めるために活用されるケースが多いです。
例えば、算数では正多角形を描く際にプログラミングを利用するといった指導が行われています。コンピューターに分かるようにプログラミングするには、「辺の長さがすべて等しい」「角の大きさがすべて等しい」「円に内接する」といった正多角形が持つ性質を理解することが欠かせません。どのような命令をどう組み合わせれば正しく作図できるかを考える過程を通し、多角形の性質に対する理解も深まるのです。
音楽では、アプリを使って音の長さや高さを組み合わせて曲を作るといった指導がなされています。子どもたちは曲作りの楽しさが手軽に体験できます。
こういった取り組みは、子どもたちが「人力では時間がかかる作業もプログラミングを活用すれば効率的にできる」と理解するきっかけにもなるでしょう。
3-2.英語と触れ合う機会が増える
英語の文章を読み取ったり組み立てたりする力がつくことも、プログラミング言語を学ぶメリットの一つです。プログラミング言語はすべて英語表記です。そのため、最低限の英語力がなければコードが理解できず、エラーメッセージが表示されても読み取ることができません。
英語力の低い子どもは、慣れないうちは内容が理解できずに困ることもあるでしょう。しかし、英語に触れる機会が増えるため、プログラミング学習を続けていくことで自然とある程度の英語力が身につきます。
3-3.将来できる仕事の幅が広がる
子どもたちの将来的な仕事の選択肢が増やせることも、プログラミング教育のメリットです。プログラミングの知識は、エンジニアのみが必要な技能ではありません。多くの分野でIT技術が導入されており、たくさんの職業でプログラミング知識を必要とするケースが増えています。子どもたちが将来どのような職業に就くかはまだ分かりません。しかし、プログラミングを学習し知識を身に付けておくことは、将来の選択肢を広げることにつながり、大いに意味があります。
プログラミング言語は基本的に英語で書かれ、国による違いはありません。つまり、全世界で共通の言語です。そのため、プログラミングの仕事自体は海外から発注を受けることも可能で、海外で活躍できる可能性もあります。
4.早ければ早いほどよい?プログラミング教育はいつから始める?
プログラミング教育は、小学校の低学年から開始されます。実際のところ、小学校低学年からのスタートは子どもたちにとってベストのタイミングと言えるでしょうか。実は、プログラミング教育をいつから始めるのが良いのかについては、保護者の考え方などによって変わってくるため、いつが正解ということはありません。そのため、「何歳からであろうとも、子ども自身が学びたいと望んだタイミングで良い」という考えでも間違いではないでしょう。
ただし、脳の8割は5歳ごろまでに完成するとの説もあります。外国語などでも、大人になってから学ぶより子どものうちから習うほうが覚えやすいでしょう。プログラミング教育も、早いほうが習得しやすい可能性が高いです。とはいえ、あまりに早くても理解できません。4歳ごろになると、プログラミングおもちゃなど楽しく学べる学習教材が充実しはじめます。低学年向けのコースを開設しているプログラミングスクールも多いです。小学校入学前の小さいうちからでも、プログラミングを学ばせることは決して難しくありません。
5.それぞれ何が違う?小中高で実施されるプログラミング教育の内容
プログラミング教育は、小学校・中学校・高校でカリキュラムが異なります。ここでは、それぞれの学校でどのようなことを学ぶのかについて解説します。
5-1.小学校
小学校で行われるプログラミング教育では、「プログラミングがどのように社会で活用されているか」を知ることと、プログラミング的思考を育むことが主な目的となります。プログラミング教育というとイメージされがちな、プログラマー養成課程のようなものではありません。「プログラミング」という独立した教科が設けられるのではなく、算数や理科などの既存科目にプログラミングの要素を取り入れる形で学びます。授業で重視されるのは、プログラミングに必要なものの考え方を学ぶことです。
IT機器の基本操作や情報活用能力、情報モラルやインターネットリテラシーなどについても学びます。ただし、何年生でどの教科にどのようにプログラミング要素を取り入れて指導するかは決まっていません。各学校の裁量に任されているため、ICTの整備状況などに応じ内容を考えることが必要です。そのため、学習によって学ぶ内容はさまざまです。低学年であれば、タブレットやPCなどの端末を使わずにプログラミングを学ぶ「アンプラグド・プログラミング」も可能でしょう。
5-2.中学校
中学校では、以前から技術・家庭科の一分野として情報技術の項目がありましたが、指導されてきたのはコンピューターの活用による計測・制御の基本的な仕組み、簡単なプログラムの作成などの簡易的な内容でした。それが、2021年に新しい学習指導要領の全面実施が始まったことで、論理的な思考だけでなく技術面も重視されるようになりました。たとえば、複数の情報を用いて自分でプログラムを制作するだけでなく、動作確認や検証、評価、改善や修正まで行います。ITセキュリティも学習内容の一つです。
ソフトウエアを扱うだけの受け身な活用にとどまらず、ネットワークを通してコンピューターに働きかけ応答を得る双方向性のコンテンツをプログラミングすることも、指導内容として取り入れられています。なお、小学校と同様、中学校でもプログラミングという科目が新設されるわけではありません。技術・家庭科のなかで指導されます。
5-3.高校
高校でのプログラム教育では、「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」が新設されます。情報Ⅰは必修科目で、情報Ⅱは選択科目です。情報Ⅱを選択することで、情報Ⅰで習得したスキルを活かしより実践的な内容が学べるようになります。たとえば、データの活用やコンテンツの作成方法などです。高校では、情報Ⅰが必修化されるまえは「社会と情報」「情報の科学」の2科目から選択すれば良く、プログラミングについて学べるのは情報の科学のみでした。社会と情報を選択した高校生は、プログラミングを学ぶ機会がないまま卒業していたわけです。情報Ⅰが新設され必修となったことで、全生徒がプログラミングや情報セキュリティについて学ぶようになりました。
教科書では複数のプログラミング言語が扱われており、小学校や中学校と比べ専門的な知識の習得が求められます。とはいえ、プログラミングスキルの習得が最重要視されているわけではありません。コンピューターの仕組みを理解し、問題を発見して解決する能力を高めることがもっとも大切とされており、これは小学校・中学校を通して一貫しています。
6.パソコンが足りていない学校も!プログラミング教育の問題点
プログラミング教育は、未来を担う子どもたちにとって不可欠な学びであることは間違いありません。とはいえ、いくつかの課題を抱えていることも事実です。もっとも大きな問題として、ICT環境の整備が整っていない学校の存在が挙げられます。たとえば、パソコンやタブレットを児童や生徒1人につき1台用意できない、ネットワークが整っていないなどのケースです。これでは、児童や生徒が十分にプログラミング教育を受けられない恐れがあります。
教員のスキル不足も看過できない問題です。プログラミング教育が必修化されたものの、実際にプログラミングを学んだことがない教員は少なくなく、知識不足のまま指導する事態になりかねません。対策として、政府は「未来の学びコンソーシアム」を立ち上げてサイトでプログラミング教育の実践事例や教材などを紹介するなど、教員向けの研修組織を設置しています。
セキュリティ対策も課題です。PCやタブレットを使うと、学習履歴が残ります。このような個人情報の取り扱いをどのようにするか、適切な規定が必要です。
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プログラミング教育のベースにあるのは、論理的な思考を身に付けさせ、子どもの可能性を広げることです。小中高で必修化されたこともあり、IT化が進む時代の変化についていくためにも、今後はプログラミング学習に力を入れることが望ましいでしょう。整った環境で学ぶには、個別レッスンや受験対策が充実した「プログラミング教育 HALLO」がおすすめです。一般的な「プログラミング」だけではなく、情報セキュリティや応用プログラミングなども楽しく学べるため、情報Ⅰの授業にも対応していけます。まずは無料体験レッスンにご参加ください。
執筆者:プログラミング教育HALLOコラム編集部
更新日:2022/09/15
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